つい最近まで、
ちょくちょく依頼されるにも関わらず、
絶対に お断りしていた加工が
やっと、
私が納得出来る精度で出来る様になりました。

それは、
【全くネジ切りされていない】
アヘッド用フォークコラムに、
クイルステムを付けられる様に
フォークコラムにネジを切る加工です。

元々、ネジが切ってある物なら、

そのままダイスを通して、
ネジ部分を延長するだけですから
猿でも出来る作業なんですがね。


今のイタリアンクロモリフレームは、
だいたいネジ切りコラムに戻っていますが、
1998~2010年位のイタリアンクロモリフレームは、
1インチの鉄コラムなのに、
フォークブレードだけがカーボン

ミズノやタイムのカーボンフォーク等】

という、
何がなんだか、訳の分からない仕様の物が非常に多かったし、

オール鉄フォークでも、
アヘッド仕様になっている物も、
非常に多かったと記憶しています。

↓の画像は、(保管が悪くて錆び錆びですが)
Amazonで買った、中華製の
安物のフォークコラムダイスです。

ソリッドダイスですが
3千円もしなかったと思います。

https://www.amazon.co.jp/Merlintools-%E4%B8%B8%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%B9-1-24/dp/B00LHJINZM?ref=pf_ov_at_pdctrvw_dp

DSC_0009~2

何故、
こんなゴミみたいなダイスを買ったのかは、
この記事の最後の方で説明しますが、
これを買ってから、ママチャリは勿論、
私自身のデローザや、友人のコルナゴ等の
イタリアンも含めた、
【元々ネジの切られている】
昔ながらの1インチスレッドフォークの
いろんなコラムに通してみましたが、
ダイスハンドルを使わずとも、
スルスル入って行きますし、

ほんの僅かに(糸屑の様な)
切り粉が出るだけですから、
(切れ味の良し悪しは別として)
径もピッチも、完全に適合するということです。

ちなみに
以前に、フォーク改造でお世話になった、
大滝製作所さん  に、聞いたところ、
現行のNJSのフォークコラムでも
カンパのコラムダイスを通す、
との、ことですから、
現在では、
【フォークコラムのネジだけは】、
イタリアンとBSCでは、
区別は無いという考えの様です。

【BBのネジ規格は全くの別物です】

(初期のカンパ大工具の
ダイスとかタップのネジ山角度が
55度なのか60度なのか、
私は知りませんが、
カンパが競輪用のNJS用規格に合わせた
部品を作った頃からは、
NJS用では無い、ロードレーサー用の部品も、
ISO規格に合わせ、ハブシャフトやら何やら、
ほとんどが、ネジ山角度が60度になったという話を聞いたことがある様な無い様な....

現に、
シマノのヘッドパーツ【HP7410】でも、
イタリアンとBSCとの違いは、
ヘッドチューブへの
上下ワンの圧入部分の寸法と
フォークコラムに圧入する下玉押しの内径の違いだけで、上玉押しと一番上のロックナットは、
共用になっています。

つまり、ネジ込む部分の寸法は、

【シマノの様な大メーカー】でも、
今は、

BSCもイタリアンも、
ネジ山角度が【55度】も【60度】 も
クソも無く、

同じ規格として扱っているということです。
【ヘッドパーツに関してだけ】
ですがね。

ちなみに、
アマゾンで買った、
この怪しげなコラム用ダイスですが、

ダイスの外径がΦ55mmと非常に特殊なので、

日本国内で普通に流通している規格品である
【Φ57mm用ダイスハンドル】は使えず、
普通の人ならば、
これ専用のΦ55mm用ダイスハンドルを
3600円も出して買う必要があります。

それも買ったとして、
このダイスを使って普通の人が
フォームコラムにネジを立てることが
出来るのかというと、

恐らくは不可能です。

アヘッドからネジ切りにするのですから、
当然、
フォークコラムは大幅に切断することになりますが、

最初に書いた様に、

元々ネジが切ってあるコラムなら、
そのネジ山に  このダイスを通して、
ネジ切り部を延長してから切断すれば、
何の問題もありません。

ダイスを外す前に切断し、

切断してからダイスを外せば、
切り口の潰れたネジ山もキレイに戻ります。

靴のヒモを結べる程度の器用さが有れば
誰でも出来る作業です。

しかし、

全くネジが切られていないコラムに
新規にネジを切ろうとすると、

一気に、
難易度は100倍以上に跳ね上がります。

最初の切り始めの時に、
パイプとダイスの直角を出すのが
非常に重要なんですが、

ガイドを使わずに直角に保持するのは、
神業レベルの凄腕の熟練者しか無理です。

↓の画像は極端な例ですが、
切り始めに、わずかでも傾いたら終わりです。

(ちなみに、パイプはベロクラフトさんで購入したカイセイのアヘッドコラム用)


DSC_0010~2


これこそが、
素人の私は勿論のこと
コラムダイスを持っているプロショップでも
【無垢のパイプに新規のネジ切り】
を、
【断る最大の理由】です。

つまり、
完成したフロントフォークを掴めるくらいの
【大きな径のチャックを備えた旋盤】
を備え、ネジ切りバイトでネジを切れる
鉄工所とか、フレームビルダーくらいしか、
無垢のアヘッドフォークのコラムに
新規のネジ切りは本来は、
精度的に【絶対にやれない】のです。
コラムパイプ単体ならΦ25.4mmなので、
小さな旋盤でも出来ますが、
溶接して完成したフォークだと、
コラムパイプを掴む為には、
左右のフォークブレードを主軸の奥まで突っ込む必要がありますから、主軸の内径が、150mmくらいは必要で、そんな大型の旋盤を持っているところは、非常に少ないと思います。

だから、
現実的には旋盤は使わずに、
フロントフォークは
バイス等に固定して、
ダイスハンドルを手で回して
ネジ切りする。
という作業になるのですが、
無垢材に新規でのネジ切りは、
目視とカンに頼った、
失敗が許されない一発勝負で、
直角を保持しながらネジ切り出来る様な高度な技術を持つ人は、
ほとんど居ないでしょう。

パークツールのフォークコラムダイスのセットには、無垢のパイプに新規にネジ切りする場合でも直角が出る様なガイドが付いていますが、
ガイドの長さの上下幅が短いので、そんなに高い精度は出せません

そこで、

イヤでも(アホでも)

ダイスが高精度で直角に保持出来る治具を
作ってみました。

DSC_0014~2


↑これは、NC旋盤で、
Φ28の丸棒から25.44mm に、
削り落とした後に
【同軸で】1インチ24山のネジを
ネジ切りチップで切った物を
最初の画像で紹介した、安物中華製ダイスに通したところです。
最初からダイスでネジ切りした訳ではなく、
ネジ切りバイトで0.05mmくらいオーバサイズで切ってから通したので、
わずかに切り屑を出しながら入って行く訳で

軸とネジ山部の直角精度は完璧に出ているし

ダイスに通した状態で、
ギッチギチの、ガタが全く無い状態です。

コレ専用の【変態】規格である、
内径Φ55のダイスハンドル(ホルダー)は、
Amazonでも
3600円で売ってはいますが、
価格も結構高いのに、このダイスにしか使えません。

だから、
会社に転がっている【S50C】の端材で、

普通のΦ57mmダイスハンドルで使える様な
内径55mmで外径57mmのアダプターを
作ろうかと思いましたが、

そんな手間を掛けるなら、
Φ55mm専用品を作る方が精度も良いし、
NC機なら昼休みの1時間で充分作れるので、
いっそのこと、一から専用品を作りました。

実際には、内径55.5mmで作りました。
内径を0.5mm大きくしたのは、
ある程度ガタが必要な為です。

DSC_0015~2


↑は、
ネジ切りダイス本体が嵌まり、
最終的にダイスハンドルが取り付けられる
メインボディです。
コレに先ほどのガイドを通したダイスを
装着します。

外周側のメネジ8ヶ所中の4箇所から
M8のトガリ先ホーローで回り止めを兼ね、
なるべく中心になるように固定します。
(ココで使わないネジ穴に、最後にハンドルをネジ込む様になっています。)

DSC_0016~2

更に、その上から
ダイスが外れない様に固定する
蓋↓をネジ止めします。

DSC_0017~2

(穴は4ヶ所しか使わないのに、12分割もの穴を空けたのは ご愛嬌。ヒマだったからです)

ココまでは、全て仮締めに留めて、
ホルダーの中でダイスが、
ラジアル方向【外周方向】にだけ
カタカタ動く様にしておきます。
(スラスト方向にはガタはありません。)

さて、ここからが肝心なところですが、

この.ネジ切りした、Φ25.44の丸棒に
シックリとハマってガタがほとんど無い
様に作ったガイドが
↓画像の物です。

DSC_0016~3

カイセイの新品のフォークコラムは
外径Φ25.41だったので、
それ専用に内径Φ25.48で作って丁度良い感じでしたが、
最近頼まれたネオプリマートを始め、
アヘッドステムを強く締め付けた後の物は、
歪んで微妙に楕円になっていたので、
径で0.025mm刻みで3種類作りました。

DSC_0018~2


↑は、ガイドを挿入して行く途中です。

実際に加工する時は、
ネジ切りするフロントフォークに
3種類作ったガイドの中から、
一番ガタ無くスムーズに入る物を
現物合わせで選択してから、
この作業に入ります。

【ガイドを固定するネジ】
が、通る部分のバカ穴の径は、
全て0.6mm大きく空けているので、
内径ぴったりの治具を固定するのに、
完璧にセンタリング出来ます。

そして、そのガイドをネジ止めしてから
全てのネジを締めます。

これで、
【ガイドの中心とダイスの中心】が
【完全に一致】し、
尚且つ、完璧に直角が出ています。

最後に
ダイスにネジ込まれている
Φ25.44のオネジが切られた丸棒を外し、

ダイスホルダー外周部の空いているメネジに
ハンドルを取り付けた状態が
↓の画像です。

DSC_0019~2


ガイドの長さが60mmも ありますし、
内径は3種類【キッチキチでピッタリ】
の物を作ったので、
どんな不器用な人でも、
コラムにガイドを差し込んだ時点で
イヤでも完璧に直角が出ます。

【逆に言えば斜めにすることが不可能です】

だから、この治具を使えば、
ダイスを使って無垢のコラムに
新規のネジを切るという、
非常に難易度が高い作業が、

いつも ベロンベロンの
山口達也メンバー】や、
 おクスリが切れて 手が震えている
【田代マ○シ 氏】
【清水健○郎 氏】

でも、簡単に出来る という訳です。

実際には、
ココまでして完璧にネジ切りして、
ヘッドパーツを完璧に取り付けられたとしても、
Φ22.2mmのクイルステムを挿入する為に、
コラム内径を拡大する必要がある場合もく、
それが、【手回しのリーマー】だけで済む
コンマ代の削り代なら良いのですが、
削り代が多いと、エンドミルやボーリングでの加工も必要になることも多々あります。

そこまでやれる自転車ショップは
皆無でしょう。

だから、
アヘッドからスレッドに改造するのを
断るところが多いのです。
【手組みホイールが組める程度】 の
プロショップでは全く無理な仕事ですから。

フレームビルダーなら出来るでしょうがね、
フライス盤や旋盤は絶対に ありますから。

こういう時は、
金属切削業に勤めていて良かったなぁ
と、思う瞬間でもあります。

ちなみに何故、
こんな安物の中華製ダイスに合わせた
直角保持治具を作ったのかというと、

カンパは勿論、ホーザンもcyclusも、
元々、ネジが切ってあるところを
【サラえる】様に使う為に作られていて、

 特にカンパは非常に切れ味は良いけど、
【刃の靱性が全く無い】ので、

下手に扱うと、
簡単にチッピングを起こしてしまうからです。

ですから、【刃物系工具】は、
特にカンパの物は、
絶対に他人に貸してはなりません。

下手糞が使うと一発で刃先が欠けますしコンクリートの床に落とされでもしたら、最悪の場合、ダイスが真っ二つに割れます。

この安物ダイスは材質的に
焼き入れ硬度があまり上げられないし、
刃先の研削もピンピンに鋭くは無いので通した跡のネジ山は若干曇った様な面にはなるものの、
刃先がチッピングを起こすことは、
先ず ありません。
神経質に扱う必要が無いということです。

この安物ダイスで僅かにムシレながらでも、
完璧に直角にネジ切り出来ていれば、
その後に、ホーザンやパーク等のダイスを通す時は、ガイドは必要ありませんし、
絹糸くらいの微細な切り屑が出るだけです。

だから
無垢のパイプに最初の一発目の、
ガイドとなるネジを切るのは
安物のダイス、タップが適しているのです。

チッピングを起こし難いし、
そもそも、
ダメになっても惜しくは無いですからね。